◆女は何歳まで売り物か。
女は何歳まで売り物か。
何故私はこんな所にいるのか。
わからない。
全くもって謎である。
見事なまでにピンクの照明。
ミラーボール。
妙に甘ったるいBGM。
オジサンの群れ。
…なぜだ。なぜなのだ。
私は上司と取引先の社長とで、仕事の後呑んでいたはずだ。
私は今頃お風呂に入って、明日に備えてぬくぬくと布団にくるまっているはずではなかったか。
三人で…
日本経済の展望。
社員に対する愚痴。
たわいのない世間話。
…事態は社長の一言から急変したのだ。
一軒目。
皆それなりに酔いが回った頃…
「そうだこれからストリップ行こう!」
社長、何故貴方は「もう一軒呑みに行こう」とか「カラオケでも」とか。
そういう普通の段階を三段以上飛び越しでそこへ行くのか。
全く…よくわからない人だ。
上司は一瞬ひるんだがすぐにニヤッと笑みを浮かべ
「いいですねえ!行きましょう!」
ええー!
腐っても鯛。というかしつこく言うが私は女である。
そりゃそういう場所に多少興味はありますよ?
この時私、22歳。
上司と一緒にストリップ鑑賞、というのはどうしても気が引けたのだ。
「あのう…私、ここで帰った方が良いでしょうか?」
恐る恐る上司のスーツの袖を引っ張ってヒソヒソ声で聞いてみる。
私は当然帰してくれるもの、と踏んでいた。
だがしかし。
「ちょうどイイ機会だよ!○○さんも一緒に行こう!」
…何が「ちょうどイイ機会」なのかサッパリだ!
帰せ!私を家に帰せ!断固抗議する!
…女の裸は自前で見飽きている。
心の叫びも虚しく、私は社長と上司の後をチョコチョコ、トボトボと付いていく。
はァー、帰りたい…
「結構いますね」
「皆、好きだなあ」
自分達を棚に上げてよく言うよ。
ストリップ劇場の場内はオジサマ達がゾロゾロ。それでも20人位か。
ステージからは一本の花道が伸びている。
きっとストリップ嬢がこの花道に出てきてショーを行うのであろう。
…私はなんでここにいるんだ…
オジサマたちの中で私は明らかに浮いた存在。
ストリップ嬢を除いて、唯一の「女」である。
紅一点。
こんなトコでなりたかァない!
周囲の視線が痛いなぁ…
「人生ってなんだろう」
ふと人生について考えた。
社長と上司は相変わらず談笑。
幸せな奴らだ。
場内の音楽のボリュームが上がる。
開演。
「おっ、いよいよですね」
もうどうでもいいよ。早く終わってくれたまえ。私は我が家へ一刻も早く帰りたい。
「えりいちゃん(仮名)の登場でーす!皆様拍手をー!!」
ストリップ嬢の名前。…ん…?嬢…?
…で、出たーぁ!!
ストリップ嬢「えりいちゃん」。
推定、50歳。
羽がやたらと付いた衣装に、馬鹿でかいケープを羽織って登場。
「昭和18年生まれ、永遠の18歳、えりいでーす!1943年生まれだから『イクヨ、ミ』ンナで!って覚えてねエ~!」
じきに還暦ではないですか…いくらなんでも鯖読みすぎだろう。
社長と上司はポカンと口を開けて呆けている。
「…オレのおふくろと同い年だ…」
そう呟いた上司の一言を、私は忘れない。
運悪く(?)社長と上司は「かぶりつき」の位置についてしまったのだ。
えりいちゃんは「ネットリ」と…その濃い化粧の顔の表情をを悩ましげに変えながら観客へと近づく。
一枚…また一枚…と。
音楽にのって徐々に衣をはいでいくのだ。
社長と上司の顔が強張った。
そりゃそうでしょう。
この年代の二人にとっては「お母様」のストリップ・ショーを見ているに等しいですから。
私はもうショー自体はどうでもよくなってしまい。
この二人を眺めている方が楽しかったです。
「えりいちゃん」はラメがいっぱいついたブラをするりと…。
「パイ」の「゜」を「゛」に変えたい気分。
生クリームを絞る袋が二つ、胸についてます。
多分「寄せてあげるブラ」も形無しだと思われ。
いよいよ顔が引きつって参りました社長と上司。
知ーらないっと。自分達で「来たい」って言ったんだもんねー。
「誰かに見つかると恥ずかしいから」って言って、遠くて事前リサーチもしてないこの店を選んだのが敗因ですね。
ショーの展開は「オサワリタイム」とやらになりまして。
よかったですね社長!○○(上司)さん!見るだけじゃなく、直に触れますよ!
…なんて事は言いませんでしたが。
「そこのオニイサン♪」
上司が一瞬ビクっとしたのを、私は見逃しませんでした。
さあ御指名です。
踊り子さんに恥をかかせてはいけません。上司たるもの毅然として手本を示さなくては。
えりいちゃんがお手拭きで上司の手を拭いています。
そうですね、商品ですもの。バッチイ手で触ったらいけませんよね♪
…手を導かれ、えりいちゃんのおムネにタッチ♪
…その顔はやっぱり引きつってました(*⌒▽⌒*)
その後えりいちゃんはイロイロな「芸」を見せて下さったのですが。
あまり書くとページごと削除されそうなので自粛します(笑)
上司の感想
「干物を触っているようだった」
…お疲れ様でした。
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